DACグループ思い出リレー #38 浜田貴弘編〈後編〉
DAC人生第二ステージのはじまり
DANに部署長として移ったのは2009年4月1日です。
ここから私のDAC人生の第二ステージが始まりました。
今まで求人広告しかやってこなかった人間が総合広告の会社の部署長になる・・・社員の信頼を得られるわけがありません。でも「やるしかない」そう覚悟して臨みました。
DANの当時の状況はというと2年連続で年間での赤字が相当額あり、グループの中で「DANは倒産するだろう」と言われていました。異動した2009年は少し良くなりかけているころでした。
その理由は郵政民営化で新たに郵便局のフリーペーパーの仕事をしていて、それがお客様にも人気で、DANの中でも大きな売上となっていたからです。
私も4月・5月はそれを中心に売上を考えていました。
でも6月に10月の発行を最後に一切売れないということになったんです。
民主党が政権を取った関係で、郵政3事業(郵便、郵貯、簡保)以外の仕事はすべて中止となり、そのフリーペーパー自体がなくなることになったんです。
「これだとまた後戻りになってしまう」そう思い、責任者みんなで今後どうしていくかを話し合いました。
なくなってしまう媒体の穴を埋めるためにはどうしたらいいかと聞くと、みんなから「つり革/交通広告」という答えが。
じゃあなんでこれまでやってこなかったのか。
それはリーマンショックの影響で空前の販促ブームだったからです。
企業は効果が分かりづらい広告よりも売上により直結する販促のほうに力を入れていました。効果が見えづらいブランディング的な広告は売れませんでした。
だから誰もやろうと思わなかったんです。
でもやるしかないわけです。
どうやったら効果が出やすいか、お客様にも満足してもらえるか、それを考えて売っていこうということになりました。
結局これまではやりたいことをやっていて、やらないといけないことに目を向けていなかったんです。
最初は売れませんでした。でも「集中と選択」という戦略で、つり革(交通広告)に集中して全員で取り組みはじめると、多くの知恵や情報が集まってきました。改良し、意思決定も早くしていく中で、異動して1年目で1千万、2年目で3千万、3年目で5千万とどんどん黒字化していきました。
順調、そう思っていました。
やるべきこと?やりたいこと?
その考え方が変わったのが2014年です。
毎年実施している全社員による社員意識調査でのことです。
「DACが好き」と答えた社員は7割、「職場が好き」と答えた社員は8割いる中、「仕事が好き」と答えた社員は2割しかいなかったんです。
この5年間「やりたいことではなくやるべきことをやれ」と言い続けてきた結果でした。
そうじゃないと生き残れなかったのは事実です。
でも広告会社に希望を持って入ってくる人達はみんなやりたいことがありました。それが全然できないという状況がこの回答につながっていました。
営業会社か広告会社か・・・
当時は広告会社ではあるけど、完全に営業会社でした。
でもこの会社を目指して入ってくる人は広告会社を目指してきています。
私も社員の期待に答えたい、この会社を広告会社にしたいという思いを持っていました。
そこで広告会社になるための必要な人材を得るため、キャリア採用を始めることに。他の会社で実績を持っているスペシャリストを採用していきました。
社員の意識調査がきっかけとなった会社の改革です。
もう一つ同時期に大きな出来事がありました。
新井さん(現DIN中部社長)が中部へ部署長として異動することになったんです。
これまで私は部署長として、新井さんは営業統括として、協力して一緒に会社の経営をになっていたのもあり、いなくなるとなると会社の成長が3年は遅れると思ったんです。
そうならないためにも自分自身もっと成長しないといけないという危機感を持ちました。
そこで、MBA(経営学修士)をとろうと2015年、ビジネススクールに入学しました。もともと自分自身の成長を求めていたところはありましたが、MBAで世界のいろんな事例を知ってDACを世界企業にしたいと思ったし、今の売上の10倍を上げるためのヒントが見つからないかなと考えました。
DACの考え方DACイズムがこれからの時代に適合するかを確かめたいというのもありました。
エキスパート採用とビジネススクール、どちらも順調にいきました。
エキスパート採用の甲斐あり、入社したスペシャリストたちが活躍、今ではTVCMや大きなキャスティングなどの広告会社としての実績が増えてきました。
ビジネススクールも2年で無事卒業しMBAをとることができました。
売上も順調に伸びていきました。
そんな中、2018年、石川社長にグループ全体の営業本部長をやってくれと言われます。色々な問題が起きている頃で、全体の業績が落ちていました。
石川社長の考え方として業績が落ちたら全部変えるということがあったからです。
2020年でコロナがあって、全体の業績が落ちるということがありましたが、また復活して2022年度は過去最高益になりました。
一番優先すべきことは・・・
いろんなきっかけがあり、いろんなことにチャレンジしてきましたが、総括して言えば、
「全てをかけてやってきた」ということです。
だから結婚できなかったというのは完全に言い訳ですが(笑)、本気で何かを求めたらそんなにたくさんは得られないんじゃないかなと思います。
ゴルフも好きだし、プライベートの友達もいるけど、何を一番優先しますかと問われたら、自分の場合は仕事であり会社、仲間でした。
外に出て人脈を広げていくことも大切だし、実際にビジネススクールにいったことで、広がってきてはいますが、やっぱり大切なのはDANのメンバーであり、DACのメンバーだなと感じています。
今はDACグループがこれからどんな風になっていくか、まだ見えない部分もありますが、見えないことが不安というわけではなく、石川社長がずっと言ってこられたこと、次世代の若い人材を成長させていける会社であればいいのかなというふうに考えています。
この度、株主総会をもって石川社長から会社を任されることになりましたが、継承された人たちがやるべきことは、もっと高回転で若い人材に継承させていくスキームづくりだと思います。若い人の感性やアンテナを引き出せる環境を作って、その時代・その社会にあった顧客貢献ができる会社にしていかなければと考えています。そういう人材育成型の企業体を作ることができるんじゃないかなと思っています。
もちろん若い人たち以外いらないのかというとそういうことではなく、その世代やその人の個性や強みによってできることはいっぱいありますから、それを考えて導いていくということも必要かなと思っています。
今、世の中は不確実性が高いですが、広告会社は決まっている「もの」がないからこそいろんな可能性が広がっているんじゃないかなと思います。2014年の社員調査から始まった「新たな価値創造」はずっと続いています。時代とともに変化していく、そのために必要なのは仲間の力だと思っています。
次は・・・
次のバトンは、PRDでインターネット事業部を一緒に始めて、友人としても仲の良いGLDの荒井さんにしたいと思います。
アルゼンチンにサッカー留学をしていたり、有名なサッカー選手と一緒に2年間イタリアで生活したり、普通の人が歩まない人生を歩んでいるので、面白い話が聞けると思いますよ!